地下水学会誌
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地下水面下の不飽和領域における空気残留特性:地下水位の上昇に伴う冠水過程
榊 利博小松 満
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2013 年 55 巻 3 号 p. 269-277

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抄録

水分特性曲線は地盤内の不飽和領域における地下水流動を評価するために重要な物性の一つである。地下水位の上昇によって地下水面下に冠水した不飽和領域においては,空気がどのように残留し飽和度がどのような挙動を示すかについて未解明な部分が多い。本研究では,砂を充填した室内カラム試験を用いて湿潤過程およびさらに水圧を5.5 kPa までゆっくりと増加させた冠水過程における飽和度の上昇挙動を計測した。湿潤過程では間隙空気圧は大気圧として水分特性曲線を計測し,冠水過程では気泡内圧の影響は考慮せず水圧と飽和度の関係より水分特性曲線の便宜上の延長線を推定した。その結果,冠水時(地下水面下)の正の水圧下における不飽和領域の飽和度は地下水面の上昇とともに地下水面位置における飽和度を超えて上昇した。その飽和度の上昇の割合は残留した気泡が水圧の増加により圧縮するというメカニズムだけでは説明できず,下方からの水のゆっくりとした上昇により気泡が上方へ移動した影響を受けている可能性が示唆された。この飽和度の上昇挙動を考慮しない場合,地下水面下の不飽和領域では透水係数が過小評価される可能性がある。

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© 2013 公益社団法人 日本地下水学会
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