筆者は,当時の国鉄に就職し,鉄道技術研究所地質研究室に配属されて以来,これまで55年以上に渡って山岳トンネル,とくに地下水が関わる様々な問題の解決に携わってきた。日本地下水学会誌の特集号に論文を投稿する機会を得たことから,筆者の知見の集大成として,トンネルと地下水に関してこれまでに学んだことを事例とともに紹介する。トンネル内に湧出する地下水を「トンネル湧水」と呼ぶ。論文では,まず,「トンネル湧水のイロハ」として,トンネル湧水の処理および区分,トンネル恒常湧水量の考え方や経緯,トンネル工事の難易は湧水と地圧で決まる理由を事例とともに概説する。そして,「トンネルと地下水との関係について調査・研究したこと」として,水文調査法等の体系化,路線選定,施工法や湧水の有効活用,湧水量実態調査,近接するダムとトンネルとの相互関係,トンネル湧水の水質等の各項について述べることとする。この論文が,トンネルに関わる研究者や技術者の一助になれば,幸いである。