2021 年 63 巻 4 号 p. 267-277
地下水のSF6年代に対するExcess airの影響を評価するために,中部地方の70地点の地下水を対象として溶存窒素濃度と溶存アルゴン濃度の測定を行い,Excess airの見積もりを実施した。すべての地下水は窒素とアルゴンが過飽和状態にあり,地下水涵養時にExcess airが生成されたことを示した。溶存窒素に基づいて算出されたExcess airの平均値は,山地小流域湧水で2.2 cc STP/kg, 第四紀火山山麓湧水で2.8 cc STP/kg, 扇状地地下水で3.7 cc STP/kgであった。SF6に基づく地下水の滞留時間は,Excess airの補正によって,4年から18年長く見積もられた。補正された滞留時間は,他の年代トレーサーや水文地質特性から推定される滞留時間と整合的であった。これらの結果は,日本においてSF6年代測定を実施する際にはExcess airによる年代補正が不可欠であり,特に透水性が高い第四紀火山や扇状地では重要になることを示している。