2023 年 65 巻 1 号 p. 67-76
湧水中の六フッ化硫黄(SF6)濃度の時間変化とその要因を明らかにするため,福島県川俣町の山地源流域にて,現地水文観測とSF6濃度等の分析を3年間実施した。無降雨時,湧水のSF6濃度は3.6 fmol/Lから4.6 fmol/L,湧水温は8.0 ℃から13.2 ℃の範囲で変動した。また,湧水のSF6濃度は湧水温が高いほど低い傾向を示したが,湧水温の変動幅が小さいため,流出時の大気接触の影響は小さいと判断された。さらに,湧水の流量が0.15 L/s以下では,流量が多いほどSF6濃度が高い傾向がみられた。このことは,低流量条件下では流量が多いほど,相対的に若い地下水の寄与が多いことを示唆している。また,湧水のSF6濃度は大気濃度から4年程度の遅れを伴って,経年的な上昇が示された。