本研究が対象とした有機塩素系地下水汚染地域は山形県にあり.汚染の顕在化は平成3年に始まる.この汚染に対する本格的な取組みは平成5年に開始されたが.本研究の最終的な目的は当該地区に供するシミュレーションコードを作成し浄化・改善に役立てることにある.
本論の前半では汚染状況の把握を行った.対象地では東西2km・南北1km・深さ100mに及ぶ主にTCE汚染である事.現井戸・休止井戸の存在が大きく影響していること.汚染は地表からの原液及び回収時の濃縮凝縮水が不飽和浸透したことが原因である疑いが強いことなどが判明した.
後半では.これら汚染の構図を実用的かつ体系的につかまえるために.充填層が.等価で仮想的な粒子相と間隙流体相から構成されるとするいわゆる2相モデルを用いて.粒子・間隙水間の相互作用も単純かつ定量的に考慮可能なものとし.多層・不均質・異方性を取り込める3次元非定常場の汚染拡散シミュレーションコードを作成した.
続いて.当該地区で必要とされるシミュレーション機能の検証を行い.その結果.本来汚染波及が生じないはずの粘土層を挟んだ異層問で古井戸や休止井戸がその媒介性を担って起こす汚染や.地表面からの不飽和浸透による自由地下水面への汚染浸透.土壌からの汚染物質の溶け出しなどをも縫合し得る系統的なシミュレーションコードの作成となったことが示された.