2006 年 48 巻 4 号 p. 263-277
那須扇状地における地下水酒養プロセスとして,河川の伏流や水田灌概,あるいは扇状地面での降雨浸透などの重要性が指摘されてきた.そこで,扇央部を対象に,複数の地下水酒養源からの寄与を同位体トレーサーによる3成分混合モデルを用いて定量的に評価した.その結果,蛇尾川は周辺域の地下水のおよそ60%程度を酒養していることが明らかとなった.一方,箒川の寄与は低く,那珂川・熊川からの地下水酒養は認められなかった.蛇尾川周辺を除く地域では,扇状地面への降雨が主たる地下水酒養源である.予想に反して水田灌瀧水の寄与は15%程度以下と大きくなかったが,これは扇頂部に水田が少ないためと考えられる.