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地下水学会誌
Vol. 49 (2007) No. 1 p. 33-48

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http://doi.org/10.5917/jagh1987.49.33


沿岸域における塩淡境界は,流動する地下水による移流混合の影響が大きい浅部に比べて,化石海水の拡散混合が支配的な深部の評価が難しく,現地観測と数値解析を組み合わせた評価技術の高度化が求められるようになってきた(例えば,放射性廃棄物の地層処分事業).そのためには,塩淡境界の動的な形状変化の把握が重要となるが,これまでの観測事例は浅部を対象としたものが多く,深部の現象を捉えた事例はなかった.そこで本研究は,茨城県東海村の試験地における第四系と第三系の塩淡境界を深度200mまで動態観測した.試験地ではリング状トンネル構造物(大強度陽子加速器の一部)の建設に伴ってディープウェルによる揚水工事(日量約10,000m3)が行われ,塩水が浸入する状況下にあった.まず,静的条件下の塩淡境界解析を行い,自然状態の塩淡境界形状を推定するとともに集中的な観測研究を実施する位置(塩水化が進行すると考えられる領域)を決定した.続いて,揚水工事と並行して4孔の観測井を設け,水位,電気伝導度,温度を長期観測した.その結果,第四系と第三系の塩水浸入状況の違いについて次の知見を得た.(1)電気伝導度の測定結果によると,工事開始13-22ヶ月の問に,現海水が第四系に浸入したが,第三系には浸入しなかった.遮水層は浸入層下位の不透水層で,その透水性は浸入層の1/10-1/100であった.(2)揚水工事に伴う温度プロファイルの局所的な低温化と高温化が観察された.例えば,工事開始11-12ヶ月後に現海水浸入層が低温化し,18ヶ月後には第四系と第三系の地質境界付近などで低温化した.本試験地では,第四系への現海水浸入の他に,地層に含まれる塩水が複数深度から浸入した.(3)静的条件下の塩淡境界解析で,工事前の第四系と第三系の塩淡境界を推定した.塩淡境界の位置は観測結果と一致したが,第三系の塩分濃度評価は困難であった.静的条件下の塩淡境界解析は,浅部の形状が妥当であっても,深部まで含めた評価には不十分であることが分かった.

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