本研究は介護老人福祉施設に勤務する看護師を対象に,車いすを使用する高齢者に関するリスクとリスク因子についての理解を明らかにした.介護老人福祉施設6施設に勤務する看護師12人を対象に,車いすを使用する高齢者のリスクとそのリスク因子について半構成インタビューを行い,質的に分析した.その結果,リスクは転倒・転落リスク,褥瘡リスク,外傷リスクなどの10種類が述べられ,その内容は移動・移乗動作に関する事故事象や車いす座位に関連した廃用症候群などを示していた.リスクの原因と考えられるリスク因子は【施設環境】【援助者の行動・認識】【高齢者の心身状態】の3つのカテゴリーに整理された.サブカテゴリーとして[物理的環境][人・時間][援助者の行動][援助者の認識][身体状況][ADLの状況][精神・心理状況]が見いだされた.看護師は高齢者が車いすを使用する際のリスクとリスク因子を多角的にとらえていた.