本稿の主な目的は,公立大学法人の財務分析の端緒を開くとともに,その特質や課題を明らかにすることである.本稿において,公立大学法人に作成が義務付けられた財務諸表を使って分析した結果示唆されたことは,①資産に占める有形固定資産の比率が大きい,②目的積立金は貸方上の比率は大きくないものの,損益計算上は小さくない役割を果たしている,③業務活動で得た資金の範囲内で,投資や債務の支払いを進めている,④未処分利益の多くは目的積立金として処分される傾向にあるが,次期中期目標期間にどれほど繰越されるかは不透明である,⑤法人業務にかかる費用の約4割が,住民等の負担に帰せられる,⑥しかしながら,法人ごとに見れば財務状況のバラつきは大きい,⑦保有する資産と経常利益,業務活動,投資・財務活動,及びその結果には一定の関連が見られる,などであった.
公立大学法人財務の概略は示せたものの,公立大学法人の財政・財務分析にはまだまだ課題が多い.実質的なインプリケーションを得るためにも,残された課題を解決していかねばならない.