高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
論稿
美術系大学からの卒業後進路選択
作家志望に着目して
喜始 照宣
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2015 年 18 巻 p. 191-211

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抄録

 本稿では,作家志望の学生の卒業後進路選択に着目し,彼らの語りをもとに,美術系大学において就職者率の低さが生じるメカニズム解明を試みる.分析では,まず作家志望者の学卒後メインルートである大学院進学とアルバイト等の選択理由を検討し,それぞれの進路選択に含意された学生の意図や戦略を確認する.つぎに,彼らにとって就職が選ばれにくい背景として,実技重視の教育体制のもと,就職を「制作の休止・趣味化」とする独自の意味が生成されていることを指摘し,それは実技系教員―学生間,学生同士の相互行為により維持・強化されることを示す.しかし他方で,就職は制作継続のためであれば必ずしも忌避されておらず,彼らは大学界と美術界の論理の狭間で進路をめぐる不安や葛藤を経験していることを最後に明らかとする.

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© 2015 日本高等教育学会
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