日本水文科学会誌
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総説
国際レベルの越境地下水の管理のあり方
国連国際法委員会からの提言
山田 中正
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キーワード: 地下水の国際法
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2010 年 40 巻 3 号 p. 71-84

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抄録

 国連総会の重要な任務の一つは,国際社会の正義と秩序のための法の支配を確立するために国際法の法典化を行うことである。国連国際法委員会は,その法典化のための基礎文書を作成する国連総会の下部機関である。同委員会は,越境地下水の法の条文草案を起案する作業を2002 年に開始した。筆者はこの事業の特別報告者に任命され,同委員会は2008 年にその最終報告を国連総会に提出することができた。国連総会は,2011 年にこの条文草案をどのようにして条約にするかを決定することとされている。ほとんどの国家が,隣国との間の越境地下水を持っている。地下水は,人類の生命維持に不可欠な資源であり,また他の代替物がないのに最もひどく掘削されている資源である。国際社会は越境地下水の適正な管理,環境保全,国際協力及び同一の地下水を共有する国家間の紛争解決のための法的規範の緊急な確立を必要としている。この論文は,問題の背景,条文草案がハイドロジオロジスト及び地下水行政官と協力して作成された経緯,条文草案の主な要素,各国の立場及び条文草案の将来の見通しを論じるものである。

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© 2010 日本水文科学会
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