日本水文科学会誌
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総説
硝酸性窒素による地下水汚染対策 -優良事例の策定に向けて-
田瀬 則雄李 盛源
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2011 年 41 巻 3 号 p. 55-61

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抄録

硝酸性窒素による地下水汚染が深刻な問題となっており,法制度の整備,施肥量の適正化,家畜排せつ物の適正処理などの対策が行われているが,必ずしも対策効果が現れておらず,汚染された地下水の回復,さらに浄化・修復についてはほとんど進んでいない。とくに生態系の構成要素である地下水として,汚染された地下水を原位置あるいはオンサイトで浄化,回復・維持するという視点での技術開発が不可欠である。このような浄化・修復手法で,コストなどを配慮した実証事例がほとんどなく,対策として十分可能な成功事例,優良事例を蓄積していくことが急務である。本稿では,浄化・修復手法の優良事例の策定に向けての課題や考え方を示した。
近年注目されているのが,原位置浄化法で,とくに安価で,技術(浄化プロセス)が明確で,維持管理が容易で,十分な効果が期待できる方法として,透過性反応(浄化)壁が考えられてきている。硝酸性窒素汚染対策としての事例は多くないが,日本ではいくつかの実証実験が行われている。浄化の実証実験を成功させ,優良事例を積み重ねるには,いくつかの条件を整える必要がある。まず適用する浄化技術の浄化原理・プロセスが明確であり,水文地質学的構造が把握でき,透水性が良く,効果を判定しやすい汚染サイトで実施することが重要である。また,透水性浄化壁はある程度の長さのある連続壁とし,下流への効果が判定しやすいようにすることなどが必要である。

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