日本水文科学会誌
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研究ノート
巨大都市ジャカルタのチリウン川における水質汚濁特性
大西 晃輝小野寺 真一Rachmat F LUBIS齋藤 光代Hendra BAKTIRobert M DELINOM清水 裕太
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2013 年 43 巻 2 号 p. 39-46

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抄録

本研究では,火山性山地からジャカルタの中央を通ってジャカルタ湾へ流れ込むチリウン川における水質汚濁特性とその季節的・空間的変化を明らかにするとともに,自然浄化作用の影響について検討することを目的とした。そのため2010年の雨季である4月と12月及び乾季である6月と8月に河川の中流から下流にかけて,BOD,DOC,主要陰イオン,及び栄養塩類の濃度分布を確認した。BOD,DOC,及びNH4-Nの濃度はそれぞれ平均14.8 mg/L,11.1 mg/L,2.6 mg/L,最大で70.0 mg/L,41.7 mg/L,15.4 mg/Lであり,BODは日本の河川における生活環境の保全に関する環境基準を遥かに超えていた。さらに,BODについては非常に大きい季節変化が見られ,雨季である12月の平均値は3.5 mg/Lだったのに対し,乾季の6月は26.1 mg/Lであった。雨季にBODが低下した原因としては,乾季の間に河床に堆積した有機汚濁物質が雨季の出水時に流されたことと,雨季の降水によって酸素供給量が増加し有機物の分解が促進されたことが考えられる。また,空間的に見ると,BODは流下と共に著しく低下していた。チリウン川流域では,インフラが十分に整備されていないため至る所で下水が流入している。したがって,本来は人間活動の影響をより強く受けている下流域ほどBOD濃度は上昇するはずである。この結果は,BOD/Cl比の空間分布の傾向とともに,熱帯の高温下で極めて高い自然浄化能があることを示唆した。

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© 2013 日本水文科学会誌
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