日本水文科学会誌
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研究ノート
江戸中期に六郷扇状地で築造された「堤」の目的と役割に関する水文学的検証―地下水人工涵養の機能を中心に―
肥田 登
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2016 年 46 巻 3 号 p. 185-195

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抄録

筆者は天明三年六郷髙野村絵図に出あった。この絵図は秋田県六郷扇状地の扇央に「堤」が存在していたことを示す。「堤」の跡は今も現地に残っている。関連する古文書類を分析した結果,まず,この「堤」は江戸中期に造られたものと推定された。次に,「堤」は水田の灌漑用水を補給するために造られたが,浸透能の大きい扇央の砂礫層の位置に在ったことから,「堤」には水は溜らなかった。その結果,「堤」は図らずも地下水人工涵養池と同類の役割を果たしていたものと推察される。

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