日本水文科学会誌
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論文
日本海・東シナ海側離島・高山の湿性沈着物に対する低水流出の渓流水質の応答
海老瀬 潜一 永淵 修川村 裕紀
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2022 年 52 巻 2 号 p. 39-60

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抄録

日本海・東シナ海側離島・高山は中国大陸に面し,偏西風や冬季北西季節風による大気汚染物質長距離輸送の最前線である。岩木山等10地域は中央峰から20 km内に酸性雨測定地点がある。渓流調査は流量の安定した低水流出時に行った。7種無機イオンの湿性沈着物と渓流水質の間でSO42−やKに相関が認められ,後者の前者に対する濃度比やNa/Clモル比からその由来が検討できた。NO3+NH4–Nの濃度比が1.0前後と小さく,植生の摂取影響が推測された。K等ミネラル4成分の比は2.5超と大きく,地質由来が推側された。下対馬の酸性雨測定所は脊梁山地東側4渓流の上流にあり,流域の標高差を反映して渓流水質に濃度差があった。屋久島では北端部山稜中腹部に酸性雨測定所があり,近隣4渓流の19年間の湿性沈着物と渓流水質の経年変化の相関や変動係数と両者の濃度比から,大気汚染・海塩・地質の寄与が検討できた。湿性沈着物測定地点の標高・方位や流域地形の差違による濃度比への影響が明らかになった。

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