赤池は,富士山北麓で大雨が降ると出現する一時的湖沼である。しかしながら,赤池の水質・同位体データは現時点で限られており,赤池の出現メカニズムの詳細については,未だ不明な点が多く残されている。本研究では,赤池の成因を明らかにするために2021年に出現した赤池及び周辺地域の水試料の水の水素・酸素安定同位体比及び主要溶存イオン組成の測定を行い,2020年の既報データとの比較を行った。2021年の赤池の消長は,西湖-精進湖間の水位差の変動と密接に関係しており,赤池の出現が少なくとも精進湖の水位上昇のみに起因するものではないことを示唆している。2021年の赤池の水の安定同位体比は,近隣の水試料に比べ高く,同時期の降雨試料により近い値を示した。また赤池では,Ca2+とHCO3−の濃度が周辺の水試料に比べ低いという特徴があり,今回出現した赤池の水が2020年と同様に,直近の降雨が地下浸透後に比較的短期間で流入したものであることが示唆された。更に,2021年の赤池出現時の降雨量は2020年の約半分であったにも関わらず,2021年の赤池では,各溶存イオン濃度が2020年に比べ低い傾向が見られた。こうした関係は降雨による希釈効果では説明できず,降雨量の違いが赤池へ流入する地下水の流動速度及び地下水量に影響を与えた可能性を示唆している。