国際ビジネス研究
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スペシャルティーファンドリーの競争戦略 : アナログファンドリーの可能性について
八井田 收
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2010 年 2 巻 1 号 p. 123-138

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抄録

本稿は、半導体業界において新しいカテゴリーであるアナログスペシャルティーファンドリー(以下,ASF)について、その競争優位性と発展の可能性の検証を試みる研究である。従来のアナログIDM(Integrated Device Manufacture)企業に加えて、近年、アナログ半導体に特化したファンドリー企業が出現してきた。また、大規模先端ロジックファンドリー企業も世代の古い生産ライン(Fab)を利用してアナログファンドリービジネスに参入し始めた。このような3つの企業群で構成されるアナログ半導体セクターの中で、ASFが競争優位を獲得していくのか、その可能性について2つの手法を用いて競争分析を行った。一つは、ASFにとって市場参入機会とアナログ企業群間における脅威を明らかにする外部分析であり、もう一方は、資源ベースとアーキテクチャー議論に基づく内部分析の点から競争優位の能力を評価する。外部分析では、最近の電子機器用途に要求されるアナログ・カスタムICにおいて、ロジック半導体と同様に、製品をいち早く市場投入するため、アナデジミックスICの需要に参入機会が認められる。また、それを支えるアナログIPやEDAツールが急速に整備されてきた。しかし、大規模先端ロジックファンドリーの脅威が時間とともに増すと想定される。資源ベースに基づく内部分析からは、高度なアナログ特性をもつリニアICでは、アナログIDMの競争力は依然として揺ぎないとみられる。ASFは、きめ細かいアナログIPで大規模先端ロジックファンドリーに対して一時的ながらも競争優位性を出し、発展する可能性が示唆される。製品および工程アーキテクチャーに基づく分析からは、アナログ設計と製造に関するEDA手法が整備され、アナデジミックスICがモジュラー型アーキテクチャーで発展可能であることが確認された。さらに、アナログIPやPDKの向上が、従来の擦り合わせ作業に匹敵する価値になってきた。アナデジミックス製品においてアナログIDMと差別化を図る一方で、大規模先端ロジックファンドリーの脅威に対しては、集中戦略による先行優位が確保できるかどうかが勝敗の分かれ目になると推察される。ASFの競争優位性と可能性が確認されたが、アナログ半導体セクターの企業群内で成功するかは未知数である。今後、ASFの発展と個々の企業について検証していく必要がある。

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