2013 年 5 巻 2 号 p. 91-106
本稿では、企業がBOP層の末端ステークホルダーを直接BOPビジネスの対象にすることへの疑問から出発する。この疑問に対する解決策として、BOP層に関連している非伝統的なパートナーとのコラボレーションに焦点を当てることにする。とくに、BOP市場における企業とNGOの協働研究、企業とMFIの協働研究、企業と国際機関の協働研究に注目し、BOP層における企業と他組織の資源能力と協働形成理由を明らかにする。また、BOP層が企業バリュー・チェーンとの関わりを消費、流通、生産、研究開発の四段階に分けて説明する。企業がBOP層の人々をバリュー・チェーン全体に参加させるために、二種類の協働活動が重要であることを強調する。つまり企業と他組織の相互補完型の一次協働と、企業と現地セクターの新価値創造型の二次協働である。一次協働の成功が二次協働の形成に繋がり、二つの協働があることからBOPビジネスがうまく実現できた要因であることを明確にする。最後に日本企業三社の事例を考察し、二つの協働の存在を検証することにする。