国際ビジネス研究
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日本の製薬企業によるクロスボーダーM&A : 武田薬品工業を事例に
小久保 欣哉
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2014 年 6 巻 2 号 p. 93-104

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抄録

本稿は、日本の製薬企業のクロスボーダーM&Aの一連のプロセスについて、特に資源面に焦点をあて、事例分析から探索的に検討したものである。これまでの日本の製薬企業のM&Aの多くは、国内企業間での水平統合が中心で、クロスボーダーM&Aにおける経験やノウハウが明示的になっていない傾向がある。本稿では、日本の製薬企業の中でもクロスボーダーM&Aに取組んでいる武田薬品工業を事例にして、日本の製薬企業がクロスボーダーM&Aを行う際の検討要素を明らかにした。その結果、第一に、資源創造を目的にM&Aを選択するためには補完すべき資源が何か、を明確にする必要がある。その前提として、M&Aの戦略方針を明確に定めることが重要である。第二に、失敗リスクが高いといわれる、クロスボーダーでのM&Aを必ずしも前提とするのではなく、代替としての自国内企業の買収対象の検討も充分に行う必要がある。そのためにも、識別する能力を向上させることが重要である。第三に、クロスボーダーM&Aでは、国を跨ぐため文化・制度が異なる企業間の統合、融合が必要となる。そのためには、グローバルな対応が前提となり、統合後の買収企業との間の資源再配置に備えて事前に素地作りを行うことが重要である。この点は、本稿での検討により、新たな可能性が示された。

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