国際ビジネス研究
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BoPビジネスの成功要因の探求 : 15のビジネスモデルと3つの理論的示唆
菅原 秀幸平本 督太郎
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2014 年 6 巻 2 号 p. 105-122

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抄録

日本企業によるBoPビジネスの成功事例は、数少ない。そこで本研究では、なぜ日本企業には成功事例が少ないのかという問題意識の下に、すでに成功している世界の111事例の分析から、BoPビジネスの成功モデルを抽出した。さらに成功モデルの分析から、3つの理論的示唆を得ることが出来た。これら成功モデルと理論的示唆を、日本企業が事業計画策定の際に取り込むことによって、事業計画の熟度が高まり、成功の可能性が高くなる。本研究の目的は、このように実践的な知見と理論的示唆の提供を通して、日本企業の成功に資することである。具体的な手法としては、ピクト図解を用いて、事業の主要なステークホルダー間での製品・サービスとお金の流れを、7つの記号のみを使って図として表現した。これによって、各事業のビジネスモデルを共通のルールに従って図示化でき、ビジネスモデルの分類・共通要因の抽出が容易になる。こうして成功事例の分析を行なったところ、15のビジネスモデルを抽出し、それらを3分類することができた。これまで多くの日本企業は、製品の性能や品質を重視する傾向が強い一方で、ビジネスモデルの構築にはそれほど注力してこなかった。しかし、BoPビジネスの成功には、すぐれた製品・サービスに加えて、斬新なビジネスモデルが不可欠となる。日本企業が海外市場でこれまで蓄積してきた成功モデルは、BoP市場では通用しない。そこには非連続性が存在し、市場の特性がまったく異なるからだ。そのために日本企業は、これまでのところ苦戦を強いられている。しかし世界に目を転じると、すでに数多くの成功事例が存在する。成功から学ばない手はない。それらの分析から抽出された15のモデルと3つの理論的示唆は、いわば成功のための定石だ。この定石をおさえることで、成功の可能性は格段と高まる。定石を知らずにBoPビジネスを実践しても、無謀な挑戦に終ってしまうだろう。日本企業がおこなっているBoPビジネスは、現在のところ、15モデルの中の数パターンでしかない。挑戦する余地は大きく残されている。

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