2016 年 8 巻 1 号 p. 59-72
本稿は、海外子会社のパフォーマンスと本社、駐在員、現地従業員の権限の関係を明らかにした研究である。既存研究では、本社と海外子会社のどちらに権限を持たせるべきか、及び駐在員と現地従業員のどちらに権限を持たせるべきかの議論は行われてきた。しかし三者を同時に扱い、パフォーマンスとの関係を見た研究はほとんどない。そこで本稿は、日系タイ販売子会社 50 社のデータを用いた重回帰分析を行った。結果、日系タイ販売子会社において、1)本社の権限を減らして駐在員に権限を与えるほど海外子会社のパフォーマンスは高くなること、2)駐在員の権限を減らしてタイ人従業員に権限を与えるほど海外子会社のパフォーマンスは低くなること、3)タイ人従業員の権限と海外子会社のパフォーマンスの間の負の相関関係は現地国籍企業との取引割合が増えると弱まること、が明らかになった。