国際ビジネス研究
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研究論文
在中国日系進出企業における「現地採用日本人」の活用に関する研究
日系企業及び現地採用者本人に対する調査を踏まえて
古沢 昌之
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2017 年 9 巻 1-2 号 p. 19-34

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抄録

本国人の海外派遣と現地人の登用(現地化)を巡る諸問題に直面する中、多国籍企業の経営においては、「駐在員 vs. 現地人」という二分法的発想を超克した新たな人材オプションが模索されるようになってきた。その1つが「現地採用本国人」(self-initiated expatriates: SIEs)の活用である。先行研究によれば、SIEsには、従来型の本国人駐在員(assigned expatriates: AEs)に比して「人件費が低廉」であるほか、「異文化への強い関心」を有し「長期の海外勤務」を受容する用意があること、さらには本社所在国の文化と現地の文化の橋渡し役(「バウンダリー・スパナー」)として期待できることなどの魅力がある。

そこで、本論文では、在外日系企業が最も多く所在する中国における実態調査に基づき、①現地採用日本人の雇用状況、②現地採用日本人の属性、③自社の現地採用日本人の働きぶりに対する日本人駐在員の評価に関して考察する。

調査の結果、上記のリサーチクエスチョン①の「現地採用日本人の雇用状況」については、全体で現在雇用している企業は26.6%で、過去に雇用したことがある企業を加えると42.6%となった。また、日本人SIEsを雇用する理由としては「日本人の考え方・マナーに対する理解」や「日本語能力」など「日本人性」に関わる項目が上位に来た。そして、「非製造業」「中国内の主要顧客として日系企業・日本人を抱えること」「日本人駐在員比率」「日本生まれの日本人総経理」「日本語能力を重視した中国人経営幹部・管理職の採用・登用」が日本人SIEsの雇用に影響を及ぼしていることが分かった。次に②の「現地採用日本人の属性」に関しては、日本人SIEsの39.7%を女性が占めた。一方、日本人SIEsが「中国での在住・勤務・留学経験」や「中国語能力」において日本人駐在員を大きく上回ったことは、彼(彼女)らが日中間の「バウンダリー・スパナー」としての可能性を秘めた人的資源である旨を物語っていると言えよう。最後に、リサーチクエスチョン③の「現地採用日本人の働きぶり」を巡っては、回答企業は自社のSIEs社員に「勤勉・誠実・時間に正確」といった日本人性を見出すとともに、「取引先の日系企業・日本人への対応面」での貢献も高く評価している。また、日本人駐在員・日本本社・中国人社員との「信頼関係」の面でも高いスコアが示された。他方、先行研究で散見された「強い転職志向」や「思考・行動の過度の現地化」といった事項に対する企業側の不満は大きくないことが分かった。

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