2017 年 9 巻 1-2 号 p. 55-71
本稿は、大企業に比べて内部資源の乏しい中小企業が、長期の国内経験ののちにM&Aなどの特定のインシデントがなくても急速に国際化しているという、特に近年の日本において散見される現象のうち、強力な国際的起業家精神がみられないにもかかわらず急速な国際化を果たしているという既存研究で解明されていない現象について、質的、量的手法を組み合わせた混合研究法(Mixed Method Research)により明らかにする。
具体的には、まず、上記のような現象として長田廣告の事例を分析した結果、そのような急速な国際化の背景にある新たな成功要因として、外部資源としての「外部専門家の活用」が浮かび上がった。次に、そうした外部専門家がどのような役割を果たすと国際化のスピードが増し、急速な国際化を実現できるのかについて、定性的に分析したところ、「文脈に沿った情報提供」、「ネットワーク紹介」、「精神的支援」、「学習支援」という4つの役割要因を抽出した。その上で、それらの役割について日本貿易振興機構(ジェトロ)の質問紙調査結果データを使って定量的に検証し、一般化を図った。さらに、4つの要因を「国際化のスピードに影響を与える諸力のモデル」(Oviatt & McDougall, 2005)に加筆し、提示した。