2015 年 30 巻 2 号 p. 77-86
本報告はスリランカの国家CBR事業におけるJICAボランティア・ソーシャルワーカー隊員の役割について明らかにすることを目的とする。
ドキュメント分析の主なデータとして3名のソーシャルワーカー隊員の計画書と報告書を、補足的なデータとして筆者のフィールドノーツと過去の調査結果をそれぞれ収集した。また、CBR主担当官に関する公文書の収集、その補足として同担当官へのヒアリングとトレーニングの視察等を行った。CBR主担当官の役割の整理後、ソーシャルワーカー隊員の役割に関して内容的および時系列的に整理を行った。その結果、1)地域のアセスメントおよび評価、2)新しい実践の提案とモデル的実践の普及、3)既存の活動の活性化、4)多職種のコーディネートに分類された。
これらの分析結果から、地域に根ざしたインクルーシブ開発、複線アプローチ、社会モデルおよび人権モデルが、現場のソーシャルワーカーの役割を検討する場合に基本的な枠組みとなりうることが示唆された。また、外部からの支援に関してコミュニティの主体性の尊重と間接支援の重要性が示された。