目的
在留外国人の増加、高齢化に伴い、今後訪問リハビリテーションで外国人対応を行う機会が増えることが予想される。本研究は、理学療法士(以下PT)が在留外国人高齢者に対して訪問リハビリテーション(以下訪問リハビリ)を実施する際に直面する困難を明らかにすることを目的とした。
方法
在留外国人高齢者への訪問リハビリを経験したPTを対象に、半構造化面接法を用いた質的記述的研究を実施した。
結果
研究対象者11名(男性9名、女性2名)、平均年齢39.3歳、平均PT経験年数13.7年であった。対応した在留外国人高齢者の出身国は、中国、韓国、台湾、インド、ベトナム、タイ、オーストラリア、アメリカ、イギリス、ドイツであった。分析の結果、PTが直面する困難として、10のカテゴリー【外国人高齢者とのリハビリ概念の違い】【ゴール設定の難しさ】【多言語支援の不足や支援に関する情報の入手】【リハビリ業務以外の対応の負担】【日常的なコミュニケーションによる信頼関係の構築】【言語の違いによる詳細な意思疎通】【文化の違いへの対応】【宗教に対する関わりにくさ】【日本人と接することに抵抗感をもつ外国人高齢者への対応】【PTがもつ外国人への先入観による訪問リハビリ実施の不安】が抽出された。
結論
PTが直面する困難として、日本と一部外国人高齢者との間に「リハビリ概念」の違いが見出された。言語の壁による困難も大きく、多言語支援の不足や支援に関する情報を入手しにくい制度上の困難も存在した。また、個人宅へ訪問し個別対応を行う中で、リハビリ業務以外の外国人高齢者が抱える問題に対応しなければならないことがあった。これらは「ゴールを見据えたリハビリの実施」を難しくしていると考えられた。