国際保健医療
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活動報告
ケニア中央医学研究所(KEMRI)におけるResearch Management & Administration(RMA)人材を育成する内部研修の計画・実施・評価
渡部 晃三ムリンダ 紫玉記 雷太
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2025 年 40 巻 3 号 p. 113-124

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抄録

背景

  ケニア中央医学研究所(Kenya Medical Research Institute: KEMRI)は、ケニアにおける人の健康に関する研究を行う政府系保健医療研究機関である。さらに、東アフリカ周辺国等の感染症病原体の検査・同定を行うなど、東アフリカ地域での重要な保健医療研究機関でもある。COVID-19パンデミックの際には、KEMRIはケニア国内の約半数のPCR検査を実施し、大きな役割を果たした。

  COVID-19パンデミックの際に、研究者(Researcher)に過度の負担がかかったことから、組織全体で研究者を支えるために、事務部門の職員の能力を強化し、研究者との連携を高める必要性が認識された。その結果、KEMRIは主に事務部門の職員を対象とし、リサーチ・マネジメント・アンド・アドミニストレーション(Research Management and Administration: RMA)人材として研修により能力を高め、組織内で研究者とRMA人材の協働を促進する方針をとった。

RMA内部研修の計画・実施・評価

  2023年7月から2024年1月まで、京都大学からの協力を受け、国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA)技術協力事業の一部として、30名のKEMRI職員にRMAの基礎を学ぶ内部研修が提供された。一連の研修では、遠隔及び対面でのRMA関連知識の講義に加え、京都大学での実践を参考に、研究に関わる複雑な事務作業や規則等を研究者にわかりやすく可視化する資料を作成するグループワーク「KEMRI RMAプロセスマッピング」が実施された。

  本稿は、アフリカの保健医療研究機関であるKEMRIが、同組織として初めてRMAシステムを導入するための組織内研修を実施した際の計画、実施及び研修終了後にグループインタビューで実施した研修評価の結果を報告する。

結果

  KEMRIでは、組織全体で研究者を支えることを目指し、講義とグループワーク及び集合ワークショップを組み合わせたRMA分野の内部研修を初めて実施した。RMA内部研修への評価から、研修参加者はRMA関連業務の全体像を把握し、研究業務への理解が進んだ。RMA関連専門業務や、それを支える組織運営マネジメント関連知識への学びは、研修参加者によって、研究支援業務に取入れられ始めた。異なるRMA関連部署の間やRMA人材と研究者との間で、コミュニケーションが改善し、部門を超えた協働への行動に繋がった。

  KEMRIではRMAの強化のため、人事関連規定の改定及びRMA内部研修の継続を計画している。

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