社会言語科学
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首都圏若年層の日常会話における「だから」の縮約形(<特集>対人コミュニケーションに関する定量的実証研究)
原田 幸一
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2012 年 15 巻 1 号 p. 57-72

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抄録

本稿は,首都圏若年層の日常会話をデータとし,いわゆる順接の接続詞「だから」の縮約形の使用を説明する要因を探るものである.分析の対象となる「だから」は477例得られ,うち233例が縮約形であった(縮約率48.8%).ダーラやダカなどの縮約形のうち,最も多く使用されるのはダであった(118例).後接要素の有無・後続ポーズの有無・用法(帰結的か非帰結的か)・性別の4変数を独立変数,縮約率を従属変数とし,独立変数の群間における縮約率の差の検定(フィッシャーの直接確率法)を行った結果,後続ポーズ・用法・性別に有意な差が見られた.縮約率は,後続ポーズがあるよりないほうが高く,帰結的用法より非帰結的用法のほうが高く,女性より男性のほうが高いことが明らかとなった.ロジスティック回帰分析を行った結果,後続ポーズ・性別・用法の順に影響力が大きいことがわかった.また,縮約形を全数としたダの割合(ダ率)を従属変数とし,同様の分析を行った結果,性別に有意な差が見られ,ダ率は女性より男性のほうが高いことが明らかとなった.考察の結果,後続ポーズ・用法・性別が「だから」の縮約率と関連する理由として,それぞれ<発音労力の軽減>・<形態的な合理化>・<社会規範の性差>を主張し,三つの変数の要因としての妥当性を示した.

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© 2012 社会言語科学会
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