社会言語科学
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研究論文
自己開示はどのように受け止められるのか―被開示者の対話的オートエスノグラフィーからみる同僚性への影響―
荻田 朋子宮崎 聡子宮崎 聖乃
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2025 年 28 巻 1 号 p. 127-142

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抄録

自己開示は心身の健康を促進し,教師のモラール向上やバーンアウト軽減に効果があるとされている.教員間の「開かれた同僚性」の構築のためには,開示者だけではなく被開示者の視点からも自己開示の影響を探る研究が求められている.本研究の目的は,被開示者の視点から自己開示が同僚性に与える影響を明らかにすることである.対話的オートエスノグラフィー(対話的AE)の手法を用い,教員A(タナカ)の自己開示が教員B(キムラ)に与える影響を,教員C(ナカムラ)との対話を通じて質的に調査した.対話的AEは,対話者からのフィードバックによって自己を客観視し,新たな気づきを促す手法である.調査の結果,タナカの自己開示はキムラに自己内省と経験の再構築を促し,アンコンシャスバイアスへの気づき,相反する感情,心理的葛藤,ラポール構築への積極的態度を引き起こした.また,キムラは他者理解への関心を広げ,心理的ウェルビーイングにつながる「人格的成長」「人生の目的」「自律性」「環境制御力」「自己受容」「積極的な他者関係」を高めたことが明らかになった.これにより,自己開示は「開かれた同僚性」の構築に寄与し,心理的ウェルビーイングの向上にも貢献することが示唆された.

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