2005 年 8 巻 1 号 p. 120-131
本稿では,韓国人の日本語学習者が日本語の敬語用法についてどのように考えているかについて分析する.また,韓国人の日本語学習者の母語や習得環境が日本語学習者の日本語に与える影響についても分析する.そのとき,日本人が規範的に正しいと思う敬語表現と,実際に使っている敬語表現が必ずしも一致しないことに着目し,それらを「正しいと思う言い方」と「普段の言い方」に区別して議論する.さらに,本稿では聞き手敬語における日本人の規範としての正しい言い方を示す一つの資料を提供する.本稿の分析によると,JNS群は規範的には,年代・地位の上下関係やウチ・ソト関係を考慮して話すのが正しいと考えながら,実際には親疎関係を重視してコミュニケーションをとっている.これに対し,JFL群とJSL群の日本語では,母語の影響を受け,「正しいと思う言い方」においても,「自分が言いそうな言い方」においても年代・地位の上下関係がもっとも重視されている.