玉川温泉は,Cl-SO4型 (大噴,pH=1.2) , SO4型 (pH=1.8~2.9), 中性型 (pH=6.1) の3タイプに分けられる.大噴の温泉水のBa含有量と温泉活動期間から,大噴からのこれまでのBa流出量は約35,000 tonと推定されるが,玉川温泉周辺浅所の焼山火山岩類からBaが全て供給されたと仮定すると,大きな安山岩の円柱 (半径230m,深さ200m) が必要であり,この安山岩から全てのBaが温泉水に溶出されなければならない.しかし,玉川温泉大噴周辺にも弱変質安山岩が存在することから,この仮定は適切ではない. 大噴温泉水のSr同位体比は,大噴周辺の第四系の安山岩類,下位の先焼山湖沼堆積物,阿仁合層のSr同位体比より低い値を示す.さらに,大噴温泉水がマグマ起源の流体を含む温泉水であることを考慮すると,玉川温泉大噴温泉水中のSrは,玉川温泉浅所の安山岩類や阿仁合層ではなく,地下深部に存在する低いSr同位体比の岩石が起源であると推定される.