抄録
チェコ共和国Gföhl Unit Nove Dvoryでは1000℃,>4Gpa (地下約150km)の最高形成条件を示す超高圧エクロジャイトとザクロ石カンラン岩(Medaris et al., 1990: Nakamura et al,. 2004)がミグマタイト的な片麻岩に取り囲まれて産している。このミグマタイト的な片麻岩には超高圧変成作用を示す証拠はこれまで見つかっておらず、超高圧変成岩が見かけ低圧のミグマタイトに取り込まれた産状を示す中国Dabie-Suluと非常に良く似ている。本研究では、チェコ共和国Nove Dvoryの超高圧変成岩を取り囲む酸性質岩石の変成履歴を復元するため、顕微ラマン分光分析器、カソードルミネッセンスを用いてジルコン中の微細包有物を詳細に分析した。ジルコン中の微細包有物を分析した結果、一部の試料のSiO2包有物から、464 cm-1と393 cm-1に加え、超高圧変成作用の指標となるコース石と解釈されている521 cm-1と179 cm-1の弱いラマンピークの信号を確認した。カソードルミネッセンスを用いた観察により、ほとんどのジルコンはオシレタリーゾーニングを示すコア部とその周囲を不連続に取り囲むリム部に区分できる。コース石と解釈されるラマンピークを示すSiO2包有物は全てジルコンのコア部にのみ存在している。ジルコンのリム部にあるSiO2包有物は全て石英であった。
以上のことから、超高圧変成岩周囲のミグマタイト的な片麻岩は、かつて地下約100km以深に沈み込んだ可能性が高くなった。