高遠花崗岩は長野県伊那市高遠西方から上伊那郡箕輪町沢川流域にかけて,高遠西方から北北東に細長くのびる南部岩体と,高遠北方の棚沢川から箕輪町沢川流域にかけて分布する北部岩体に分かれて分布する.近年の研究において, 柚原・加々美(1999)は,高遠花崗岩の岩石学的特徴の記載と年代学的,同位体学的研究を行い,黒雲母花崗閃緑岩~黒雲母花崗岩からなる高遠花崗閃緑岩と普通角閃石-黒雲母トーナル岩からなる高遠トーナル岩の2つに分類し,これらは異なるマグマから異なる結晶分別作用で形成されたと報告した.しかしながら,本地域では,泥質-砂質変成岩の混入や包有物が多く見られることから本地域の花崗岩質岩形成過程において影響を及ぼしていることが十分考えられる.本研究では,高遠花崗岩の成因について,岩石化学的立場から考察する.