大規模な噴火を起こすカルデラ火山では,大量の均質な珪長質マグマが存在すると考えられている。しかしながら、規模の大きな火砕噴火では珪長質マグマが複数共存する例がある。支笏カルデラでは、珪長質マグマとして流紋岩~デイサイトの3種類以上が存在し,それに加えてマフィックマグマとして玄武岩質安山岩マグマが存在した。摩周火山の火砕噴火期では、流紋岩質とデイサイト質という2種の珪長質マグマが同時に活動している。支笏および摩周の場合、珪長質マグマはSr同位体比でも明瞭に区別でき、両者は結晶分化の関係にはない。珪長質マグマの成因として、玄武岩質マグマを熱源とした地殻の部分溶融が想定されている。この場合、地殻物質の不均質性から、同位体比の異なる地殻物質が同時に溶融することが考えられる。このプロセスは大規模な溶融の場合に特に顕著であることが想定でき、カルデラ形成のような噴火では、普遍的な現象かもしれない。