火山噴火の様式や強度の多様性を支配する要因の一つは,マグマからの開放系脱ガスである.島弧の珪長質マグマ中では,個々の気泡の移動がマグマそのものの上昇よりも遥かに遅い.そのため,地殻浅部における脱ガスは,連結して形成された気泡ネットワークや流動に伴うマグマの脆性破壊によって形成されたフラクチャーを通したガス浸透流によって引き起こされる.しかし,気泡ネットワークやフラクチャーの形成条件と, それらを含むマグマの脱ガス効率について定量的に示した研究はほとんど行われていない.我々は気泡ネットワークやフラクチャーの形成プロセスを実験的に再現し,組織の観察とガス浸透率の測定を行ってきた. 気泡ネットワークはマグマの流動と発泡度の増加に伴って形成された.それに伴いガス浸透率も上昇した.さらに,マグマの脱水が進むと(数百m程度の深度),流動に伴う脆性破壊が起こり,浸透的なフラクチャーが形成されることが分かった.これまでに明らかにされた,ガス浸透率を支配する主な要因はマグマの歪量と含水量である.これらはマグマ溜まり深度や火道径によって決定づけられているため,それらが噴火の様式や強度を支配している可能性がある.