日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2010年年会
セッションID: S2-08
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S2:表層環境における鉱物─水界面とナノ鉱物
極低酸素条件下における溶存Fe(II)酸化速度
*菅崎 良貴村上 隆
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抄録

現在の地球表層では、鉄は水溶液中でFe(II)、Fe(III)イオンの状態で存在し、Fe(II)は不安定で酸化反応によりFe(III)となり、Fe(III)は(hydr)oxideとして直ちに沈殿する。Fe(II)酸化速度は、主にpHと溶存酸素濃度(DO)に依存し、-d[Fe(II)]/dt=k[Fe(II)][O2][OH-]2 (1)に従うことが5<pH<9、pO2=0.107-0.195atm、0.308-0.903atmで求められてきた。  一方で、初期原生代の酸素進化を古土壌中の残存Fe(II)/Fe(III)比と(1)式で示される酸化速度-pO2の関係から見積もるということが行われている。25-20億年前にpO2が<10-6atmから>10-3atmに上昇したと考えられているので、(1)式の酸素濃度適用範囲を考えると外挿することになる。正確に計算するには、pO2<10-3atmでの酸化速度- pO2の関係を正確に評価する必要がある。本研究では、-d[Fe(II)]/dt=k[Fe(II)][O2]x[OH-]y としてpO2=10-3、10-4atm近傍でのxを酸化実験により評価した。pO2∼10-4atm では、x=1から予測される酸化速度より1オーダー程度速く酸化が起こる、という結果を得た。これにより(1)式を用いた古土壌からの酸素濃度推定に大きな見誤りがある可能性が示唆される。

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