九州・八代地方の黒瀬川構造帯において,矢山岳石灰岩体の西方にはローソン石青色片岩(Lws-BS)が卓越する箱石サブユニットが分布することが知られているが,高圧変成作用を制約する正確な放射年代値については明らかになっていない. 箱石サブユニット中の変成泥質岩から白雲母K-Ar年代測定を行ったところ,280-299MaのK-Ar年代値を得た.試料中の白雲母の組成はSi=3.57-3.68(O=11) であり,片理を形成する白雲母中に低温高圧型の変成鉱物が普遍的に存在すること,並びに当該地域の最高変成条件(350℃,6-8kbar)から,得られた白雲母K-Ar年代値は,変成作用のピーク時の年代を示すと解釈できる.本研究で得られたK-Ar年代値は四国や和歌山の黒瀬川地域のBS相の変成岩の年代値とは異なるため,黒瀬川帯のLws-BSは地域により起源や形成時期が異なるのかもしれない.