地表に露出する付加体中に発達する断層岩の微細組織を観察する事は、海洋プレートの沈み込みに伴って生じている様々な断層運動の素過程を理解する上で非常に重要である。今回、付加体を構成しているチャート岩体中に発達する断層表面に認められる鏡肌に着目し、微細組織観察を通じて、その実体と成因を明らかにする事を目的に研究を行った。その結果、鏡肌は断層すべり時に、そのすべり運動がすべり面から約50 nm~100 nmの領域に局所集中し、その結果構成鉱物が力学的に破砕され、最終的に非晶質化する事で形成される事が分かった。またチャート岩の場合、鏡肌を伴う様な断層すべり運動は、流体の関与が不可欠な圧力溶解によって起因される事が示唆された。