NWA7325はUngroupedなエコンドライトであり,近年水星起源の隕石である可能性が指摘され,注目されている.こうしたUngroupedなエコンドライトの研究は,太陽系物質進化過程において形成された小天体の多様性や原始惑星での火成活動に関しての新たな知見が期待できるという点で非常に重要である.本研究では,この隕石の母天体での火成活動の理解に向けて,薄片試料の光学顕微鏡による観察,EPMAによる元素マッピングおよび鉱物ごとの定量分析,FEG-SEMによる微細組織の観察を行うとともに, 希ガス同位体組成の測定も行った.その結果,NWA7325は太陽系最初期に母天体のマントルに相当する部分で徐冷によって集積岩として結晶化した後に, 衝撃により母天体が破壊されるような急冷イベントを経験したと考えられる.また,最終的にこの隕石が宇宙空間に飛び出したのは約2千万年前と推定される.