2017 年 26 巻 4 号 p. 474-483
これまでに,自閉スペクトラム症(ASD)の特性を説明しようとするさまざまな理論が提唱されてきた。代表的なものとしては,ASD傾向を規則性に当てはめてものごとを理解する傾向とする共感-システム化理論,実行機能に困難があるためにASD特性が生じるとする実行機能理論,情報を意味のある全体にまとめ上げようとする動因が低い結果として細部に過度に着目するとした弱い中枢性統合(全体的統合)理論,社会的行動をつかさどる脳領域と絡めてASD特性を説明しようとする社会脳理論の4つがある。これらの理論においては,ASD特性は障害ではなく長所と短所を含む認知スタイルとして捉えられるようになってきている。これら理論に基づいてASD特性が深く理解され,彼らの強みが生かされる支援や配慮が提供されることが期待される。