LD研究
Online ISSN : 2434-4907
Print ISSN : 1346-5716
漢字に特異的な書字障害における正書法ワーキングメモリー障害の検討
構造と要素の分析から
岩田 みちる橋本 竜作柳生 一自室橋 春光
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 29 巻 2 号 p. 145-153

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抄録

これまで漢字の書字障害に対して,視覚認知障害,視覚認知障害と想起障害,漢字をまとまりとして学習する方略の欠如,視覚情報の保持障害など,さまざまな仮説が提案されてきた。これらの障害仮説に合致しない漢字の書字障害を呈した児童の障害機序を検討した。漢字の親密度を統制し,漢字の「要素」が他の漢字に含まれる共有性を操作した書字課題を実施した。その結果,木偏など「要素」を共有する漢字が多いほど修正を繰り返すことが確認された。このことから,本児の書字障害の背景には,漢字の「要素」の共有性によって形態情報の競合が生じることで保持と処理が困難になる正書法ワーキングメモリ―の弱さが疑われた。漢字の形態情報を共有する他の漢字の多さによって生じる干渉が,正書法ワーキングメモリ―の処理負荷に影響した結果,漢字に特異的な書字障害が生じた可能性がある。

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© 2020 一般社団法人 日本LD学会
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