2022 年 31 巻 3 号 p. 211-222
これまで自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: 以下,ASDと記す)傾向を示す場面緘黙児への介入については十分に研究が行われてこなかった。本研究では,ASD傾向を示す場面緘黙生徒を対象に,ASD傾向を踏まえた上で場面緘黙の解消に向けた取り組みを行った。対象生徒には,見通しの持ちにくさやソーシャルスキルの不足,他者とのポジティブな交流経験の不足といったASD傾向が認められた。そのため,取り組みでは,ASD傾向に配慮したセッションを行うとともに,エクスポージャーを並行して実施した。セッションでは,スムースに話し出すようになる,表情が柔らかくなりよく笑うようになった。エクスポージャーはおおむね良好であり,設定した課題を達成できた。これらの取り組みの成果をもとに,ASD傾向を示す場面緘黙児へのアプローチの在り方について論じた。