抄録
自閉スペクトラム症(ASD)がある者はQOLの低さ,二次障害や併存症のリスクが問題となっている。そこで本研究では,教育と疑似体験による介入(Inclusion Program through ASD Simulation: I-PAS)の,ASDに対するスティグマ軽減の効果を検討した。介入は,大学生54名(実験群26名,統制群28名)を対象とした。実験群はASDがある者と健常者との類似点や支援方法についての講義と,視覚鈍麻,聴覚過敏,触覚鈍麻状態での作業による疑似体験を組み合わせたI-PASを,統制群は実験群と同じ講義と通常の感覚状態での作業を実施した。結果,I-PASによる,ASDがある者と関わる場面に対する嫌悪感情の低下,場面後のASDがある者への今後の接近欲求の改善が示唆された。合理的配慮が義務付けられた現状を踏まえると,本研究の大学における有用性が示唆される。