景観生態学
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原著論文
放棄人工林がツシマヤマネコの生息地選択性に与える影響:30年間のツシマヤマネコの分布データを用いて
菊池 しゅき赤坂 卓美
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2023 年 28 巻 1-2 号 p. 107-117

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抄録

土地利用改変は,高次捕食者を主とする多くの生物の個体群減少の主要因である.ネコ科は土地利用改変の影響を最も強く受けている分類群の一つであり,各地で保全対策がなされ一定の成果を挙げている.しかし,これらの対策は,これまでネコ科に深刻な影響を与えてきた土地の過剰な改変にのみ注目しており,変化し続ける景観に対して長期的視点で計画がなされていないことが多いのが現状である.社会―経済学的な要因等により複雑に景観が変化し得る今日において,ネコ科の中長期的な保全対策を計画していくためには,今後影響し得る新たな要因についても予測し,取り入れていくことが求められる.特に,この数十年で世界的に急速に面積を拡大させている放棄地がネコ科個体群に与える影響はほとんど明らかになっていない.そこで本研究は,ネコ科の中長期的な保全対策に資する知見を提供するために2002年〜2004年,2010年〜2012年そして2018年〜2019年の調査で得られたツシマヤマネコの分布情報を用いて,本種の分布要因並びに生息地の利用頻度の時系列変化を,特に放棄人工林に着目して明らかにした.結果,ツシマヤマネコの分布要因は,全調査期において放棄人工林の面積のみと正の関係を示した.一方,生息地の利用頻度は全調査期で異なり,最大傾斜角と正の関係,そして標高と正の関係を示した.これらのことから,放棄人工林の増加は,むしろツシマヤマネコの分布域を拡大させる可能性が示唆された.一方,生息地の利用頻度の変化は,高密度で生息するツシマジカによる森林破壊が原因の可能性があるかもしれない.

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© 2023 日本景観生態学会
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