法制史研究
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戦後占領期日本の法制改革研究の現況と課題
出口 雄一
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2006 年 2006 巻 56 号 p. 141-174,12

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抄録

二次世界大戦が終結してから六〇年が経過した現今、「戦後」を対象とした歴史研究が盛んであり、法史学の立場からの言及も見られるようになってきた。本稿は如上の現況を踏まえ、「占領史研究」の立場からの戦後改革研究、及び、実定法学者による占領期法制改革研究の中から、「戦後日本法史」あるいは「現代日本法史」の構築に資すると筆者が考える業績を紹介するものである。その前提として、第二次世界大戦後の我が国における「占領管理」の枠組みと、その実施のために用いられた「ポツダム命令」を中心とする法令についても若干の検討を試みた。
この領域で最も研究が進んでいる日本国憲法の制定過程についての研究は、一九五〇年代の憲法調査会の活動により先鞭がつけられたが、アメリカ側史料の公開と日本側史料の整理が進んだことにより、多角的視点による通史的叙述、逐条的な実証研究、占領側の多様性の分析、本格的な史料批判などが行われている。それ以外の法領域については、本稿では一九四六年に設けられた臨時法制調査会の活動に即して研究動向を紹介したが、多くの法領域では、日本側立法関係者の同時代的な研究及び史料翻刻に加え、アメリカ側史料の利用がようやく始まった段階である。
地方制度改革・教育改革・経済改革などの「占領史研究」が盛んな分野では現在、占領政策の実施過程への関心が高まりつつある。「戦後日本法史」あるいは「現代日本法史」は、戦後占領期の我が国における「アメリカ法継受」のあり方の検証も視野に含めて、これらの研究に積極的に応答する必要があるが、そのためには洗練された方法論が不可欠である。

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