保健医療学雑誌
Online ISSN : 2185-0399
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原著
支持側の肩関節外転角度の違いによる片肘立ち位を 経由した起き上がり動作の定量的解析
原田 美由紀小嶋 功岩井 信彦
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2021 年 12 巻 2 号 p. 113-122

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抄録

要旨 【目的】支持側の肩関節外転角度の違いによる片肘立ち位を経由し端座位となる起き上がり動作を定量的に解析し,その特徴を明らかにすることを目的とした. 【方法】3 次元動作解析システムを用い健常成人15 名(年齢21.6±1.3 歳,身長168.5±3.7 ㎝,体重59.6±5.6kg)を対象に開始肢位を肩関節外転30° 位,60°位,90°位の3 条件で動作中の各関節最大角度,最大角度に到達する時点,支持側上肢の床反力最大値,床反力が最大値に到達する時点,身体重心移動距離を算出し比較検討した. 【結果】身体重心移動距離は30°位と比べ90°位は長く,60°位とは有意な差はなかった.前後分力の最大値は90°位と比べ30°位は大きく,60°位とは差がなかった.側方分力が最大値に到達する時点は60°位が30°位,90° 位と比べ有意に遅かった.最大角度および最大角度に到達する時点は,支持側の肩関節,肘関節に有意差がみられたが,それ以外の関節には有意差はみられなかった. 【結論】30°位では前後分力が大きく,90°位では身体重心移動距離が長く なる.60°位では床反力が大きくなる事も身体重心移動距離が長くなる事もなく,側方に位置する支持側上肢へゆっくりと身体重心を移動させながら起き上がっており,3 つの肢位の中で一番効率の良い開始肢位である事が考えられた.また,支持側の肩関節外転角度の違いにより生じる支持基底面の変化に応じて,支持側上肢の関節角度を調節し動作を遂行していることが示唆された.

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