2016 年 7 巻 2 号 p. 67-76
半側空間無視は脳卒中に代表される脳の機能不全により生じる神経学的症状の1 つであり,人々の自立した日常生活を阻害する.半側空間無視は過去,古くから異質な症候とされ異なる症状を呈することが報告されてきた.現在もなお病態などに関する不明点は多々あるものの,近年では脳機能イメージング手法の飛躍的な発展に伴い無視症状の発現に関与する脳領域およびそれらの領域を連結する脳神経ネットワークが特定されてきており,無視症状の異なる臨床所見とそれぞれの神経解剖学的な関連についても明らかとなりつつある.本稿ではこれまでの半側空間無視の研究を概観しながら,半側空間無視のサブタイプやその評価,病態メカニズムについて述べていく.