2011 年 31 巻 1 号 p. 13-24
市販後医薬品では,副作用報告等情報を用いたシグナル検出手法が開発されており,日本では医薬品医療機器総合機構が取り組みを進めている.一方,市販後食品に起因する健康障害発生の調査方法は未確立で,その必要性が増している.本研究では,医薬品市販後調査の概念を活用することで食品でも健康障害発生の早期察知が可能ではないかと考え,食品市販後調査の実行可能性を検証した.
生活協同組合の組合員の協力と同意のもと,インターネットアンケート調査による毎日の健康調査を行うとともに,当該生協での食品購入データを取得した.医薬品副作用の手法を参考に食品と症状の組み合わせによるシグナル検出指標値を算出した結果,健康障害が想定されるいくつかのシグナルが検出された.今後,多様なシグナル検出手法を併用しながら健康障害検出基準を見い出し食品市販後調査の分析精度を高めていく必要があるものの,食品市販後調査が実行可能であることが示唆された.