2017 年 37 巻 6 号 p. 303-311
【目的】本研究は,認知症者の発話における感情表現を調査することで,認知症者のスクリーニングを実現する.
【手法】本稿では,(1)Mini Mental State Examination(MMSE)テストによりアルツハイマー型認知症と診断された患者(9名)と健常高齢者(9名)の対話と(2)認知症と診断された患者(認知症:23人,軽度認知障害:19人)の自由発話を書き起こし,われわれがクラウドソーシングを通して集めたエピソードから新たに開発した日本語感情表現辞書(JIWC)を用いて,発話の質的内容に注目した分析を行う.【結果・考察】(1)のアルツハイマー型認知症群では「嫌悪感」,「怒り」,「不安」に分類された感情表現の使用割合が有意に増加していた.(2)の認知症群では「不安」に分類された感情表現の使用割合が有意に増加していた.認知症者は記憶障害により不安を感じると言われており,定性的に言われている特徴をJIWCにより定量的に評価することができる可能性が示唆された.