医療情報学
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特集 2022年度 課題研究会活動成果報告書
歯科・口腔医療情報における交換・連携に関する研究会
野﨑 一徳伊藤 豊井田 有亮中原 孝洋森本 徳明玉川 裕夫
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2023 年 43 巻 5 号 p. 200-201

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抄録

活動成果の概要

 内閣府が推進する「全国医療情報プラットフォーム」に係る歯科の役割として,患者が適切な治療を受ける環境や感染症の流行状況の把握に必要となる情報提供がある.とりわけ,歯科における投薬情報やアレルギー情報,さらには摂食,嚥下,構音に関わる状態の共有に関しては歯科が初発の患者情報となる可能性が高く,医科や老健施設等との速やかな情報共有が求められている.ただし,情報共有するデータとして,PDF等の文書ではなく,構造化されたデータであることが要点となる.現実的には,オンライン資格確認に必要なマイナンバーカードの普及率は8割未満(令和5年7月現在)であるが,歯科電子カルテの普及率も1割未満(令和3年度)であり,医科の診療所のそれより数40%以上下回っている.一方で,歯科におけるレセプト電算化は9割を上回っており,レセプト情報はNDBとして2次利用が進んでいる.

 このような状況下において,歯科医療情報領域において優先的に達成すべき目標の共有を行い,山積みの課題を具体化し,プロジェクト化が可能であるかの検証が求められる.そこで本研究会の主導により第42回日本医療情報学連合大会において公募シンポジウム8,公募シンポジウム9を開催することとし,行政,歯科医師会,ベンダー,教育機関,歯科医院のそれぞれの立場から,「全国医療情報プラットフォーム」に関する考え方を募った.

 公募シンポジウム8では,「歯科診療現場での医療ICTの現状と貢献と普及と課題」をテーマとし,歯科大学病院における歯科における医療ICTのありかたや,開催地でもある北海道の歯科保健医療行政におけるこれまでのICTに係る取り組み内容,NDBに蓄積された歯科レセプト情報の活用事例,そして歯科医療分野のICT化における将来像に関して議論された.

 公募シンポジウム9では,「口腔・歯科領域の医療情報プラットフォームの構築」についての議論が行われた.現在普及している歯科医療情報システムに関して,医科歯科連携,訪問介護を支援するアプリケーションがすでに実装されている状況下にあることがわかった.さらに口腔・歯科領域の医療情報交換方式のHL7-FHIR対応に向けた技術的な検討課題の検討について詳細な解説がなされた.歯科電子カルテベンダーの視点から,歯科診療所・病院歯科・歯科訪問診療の3現場における歯科ICTの現状と地域連携推進のための課題の提示がなされ,HL7-FHIRの技術に期待する内容が述べられた.最後に近未来技術の紹介として,厚生労働省口腔審査情報標準コード活用の一例として,口腔内写真から深層学習を用いて学習した物体検出アルゴリズムを用いて歯式と歯の状態を推定し,口腔審査情報標準コードを用いて出力するアプリケーション開発についての報告があった.

 医療情報共有の側面では,ベンダー同士の情報連携が自立分散的に促進されることが理想的ではあるが,その起点を設ける必要が学問分野に求められている.そこで,医療情報の国際交換規約であるHL7-FHIRを参考に,厚生労働省口腔審査情報標準コードを活用することで,カルテ情報等の共有促進を達成することを,次年度以降の目標に設定した.

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© 2023 一般社団法人 日本医療情報学会
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