主催: 日本岩石鉱物鉱床学会
化学結合の振動エネルギーに起因するラマンスペクトルは、原子間距離の微小な変化を連続的に抽出できるため、圧力スケールとして注目される。Sobolevら のダイアモンド中のコース石包有物の報告は、ラマンスペクトルによる圧力見積もりの地質学的有効性を示した。この方法は様々な鉱物に適用できると考えられるが、応用例はそれほど多くない。今回は、四国東赤石カンラン岩体のカンラン石に含まれる含水鉱物包有物(数10μm径)の顕微ラマン分析を行い、残留圧力の有無を調べた。 クリソタイルのピーク位置について内部の包有物が表面に比べて高い波数を示し、最大で1.5cm-1の波数差が見られた。この値を圧力差に換算すると0.6GPaとなる。分析上のシフト要因も検討しなければならないが、この結果は蛇紋石形成がある程度高圧条件であった制約となる。推定圧力は東赤石岩体のピーク圧力条件(3GPa以上)に比べて小さいが、カンラン石の強度が数GPaの圧力を保持できない可能性も考えられる。